ゆるキャラなのにゆるくない、呉氏だけはガチ。【呉ー市ーGONNA呉ー市ー】
2017年2月1日、広島県第三位の人口をかかえる呉市が突如として公式PRページを公開した。
「こんなゆるキャラ見たことない!
新キャラクター、呉氏デビュー」
と、でかでかとトップページに打ち上げてPRテーマソングを発表。
テーマソングの名は
”呉ー市ーGONNA呉ー市ー”
小室哲哉氏には近年再評価の声があるが、氏がプロデューサーとしてブイブイ言わせていた時代に発売されたTRFの名曲「CRAZY GONNA CRAZY」をフィーチャーしたものだ。90年JPOPど真ん中だった人なら誰でも知っている曲である。
とにもかくにも、この”呉ー市ーGONNA呉ー市ー”を見てもらいたい。
人によって色々な感想を持つだろうが私個人は
ゆるキャラに見えてゆるくない。
むしろガチじゃん。
と感じた。
実はゆるキャラとは縁が深い広島
そもそも、国民文化祭2000のキャラクターであった「ブンカッキー」を気にいったみうらじゅん氏が、ゆるキャラとして定義したのが始まりとされている。
本来は「地元の人にすら知られていない、うだつのあがらないキャラクター」という定義だったが、ゆるキャラが広まるにつれ人気者になってしまい、いわゆる「狙ったゆるキャラ」が大量に生産されることになった。
そのなかでも、くまもんやひこにゃん、ばりぃさん、ふなっしーなどの活躍は周知の通り。特にくまもんは全国でもほとんどの人が認知するほどの国民的キャラクターになった。
ゆるキャラが認知されることによって、グッズが生まれ、街の観光資源になる。ヒットすればこれほど効果的なPR手段は無い。今でもゆるキャラグランプリは毎年開催され、そのたびに大きな注目を集めている。
しかし、その全てが成功を収めるわけではなく、人気の出ないキャラクター、キャラ設定を間違えたキャラクターなどは淘汰されていく。
ゆるキャラを取り巻く環境は決してゆるくない。
呉氏は飛び道具を携えてやって来た
このようなゆるキャラ乱立時代に、鳴り物入りで登場した「呉氏」
ゆるいというより雑にも思える(誉めてる)呉氏は他のキャラとの差別化を図るためにいくつかの特徴を持っている。
① 踊れる
ゆるキャラと言えば顔が身長の2/3を占めていて足が短く、動きは制限される場合が多いのでアクションには向かない。
ところが、呉氏は下半身はラメ入りの青タイツを履いてむき出しにすることによって、ダンスという特技を引っ提げて登場してきた。
おかげで全体的にスポンジボブの出来損ない(これも誉めてる)のようになってしまっているが、下半身の自由が利くので色々なアクションが可能だ。
②名前のPR
呉(くれ)。
広島にいると全く実感がないのだが、実は知らない人にとっては呉を「くれ」と読むのが難しく、難解な地名なのだそうだ。同じく広島県人にとっては三次(みよし)も似たようなものである。
この点でも呉氏はテーマソングで「くれーしーごなくれーしー」とアピールしながらボディにも「呉」と書かれているので地名のPR効果は期待されるところ。背中には「クレ」と振り仮名まで打つ周到ぶりも見逃せない。
③リア充
テーマソングPVを見てたらわかるのだが、なんとこの呉氏には人間(多分)の彼女が存在する。
どうやって付き合い始めたのかは謎だが、ゆるキャラに人間の彼女がいるというのは画期的ではないだろうか。
しかもこの彼女、PVの終盤では自分も踊り始める芸達者ぶり。
今後どうやって展開するのかはわからないが、呉氏のキャラ立ちに大いに役立ててほしいところだ。
勝負をかけてきた呉市
呉は古くから軍港として栄えてきた町であるが、大和ミュージアムが開館した翌年を
ピークに観光客が年々減少してきているという。
しかし、ここにきて戦時中の呉を舞台にした「この世界の片隅で」のヒットにより俄然注目度が上がっている。このタイミングで大和ミュージアムだけでなく、他の観光地やグルメなどもPRしたいというのが狙いだと思われる。PR動画に出てくる小村市長の目はマジである。
今のところtwitterなどのSNSの反応は上々のようで、急上昇ワードにランクインするなどインパクト重視の話題づくりとしては好スタートだ。
ただ、このようなインパクト重視だと「出オチ感」は否めない。
先述したようにブランディングに失敗したゆるキャラたちには悲しい末路を辿るものも少なくない。
毒舌で人気が出過ぎたがゆえに、エスカレートした発言をしてしまい存在そのものが消滅してしまったキャラや、運営費確保の為に着ぐるみ本体をヤフオクで売ってしまったものもいる。
この動画だけで終わらず、常に話題を仕掛けてなければゆるキャラの中で生き残っていくのは難しいだろう。
「こんな事に税金を使うなんて」という声ももちろんあるだろう。そんな人たちも納得できるよう、呉氏は呉に金をもたらすことができるだろうか。
…と真面目に書いてみたが、こんな深読みしなくても「案外面白そうだからやってみよーや」的な軽いノリだったりしてw
【追記】
7年間、呉のゆるキャラとして活動してきた「てつぞー」が、呉氏誕生によってリストラ引退することになった。
みんなにお知らせがあるぞ〜。
— てつぞー【公式】 (@tetsuzo904) 2017年2月9日
7年間、呉の観光マスコットキャラクターとして頑張ってきたけど、引退することになったぞ〜。
今まで応援してくれたみんな、本当にありがとうだぞ〜。 pic.twitter.com/oLyp3riv4K
ゆるキャラとして一定の人気があったようだが、「呉氏一本化する」とのこと。実際、呉氏はかなり金かかってそうな気がするので致し方ないか。
ゆるキャラの世界は、かくも厳しい…。
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